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インボイス登録していない免税事業者との取引で損しないために

Chihaya Iitsuka

ご自身がインボイス制度に登録している場合、取引相手がインボイス登録していないと、不利益を受ける、というような話を聞いたことがあるかもしれません。

相手が消費税を払っていない分、こちらがその消費税を肩代わりして、多く納税しなくてはならない、というようなことです。

なんで関係のないこっちが払わなくてはいけないのか…むちゃくちゃな感じもします。

しかしこれが、あながち間違いでもないのです。

実際に、条件によっては、インボイス登録している事業者が増税となるケースもあります。

では、どのような場合にそういった不利益を受けるのでしょうか。

また、どれだけの影響が出て、どういった対処がありうるのでしょうか。

まとめました。

まずこれだけはやってはダメ

まずやってはいけないこととして、インボイス登録をしていない免税事業者への支払いについて、消費税を抜いた税抜き金額で支払うというのはNGです。

たとえば、相手から届いた請求書を見て、

税抜金額 10万円
消費税額 1万円
請求金額 11万円

とあったとします。

このとき、請求書に登録番号(T1234-5678-…)が書いておらず、相手がインボイス登録していないからといって、消費税を抜いた10万円だけを払えばいい、という話にはなりません。

たしかに、消費税を納めていない事業者が消費税を請求してくることをおかしいと感じるのは、理屈の上では間違いではなく、鋭い直感です。

しかし現在の法律上、基本的に、請求するときは消費税を上乗せすることになっています。

これはインボイスに登録していてもしていなくても、一律にそういう決まりです。

たとえインボイス登録をしていない免税事業者であっても、消費税を請求することはできるのです。

したがって、免税事業者への支払いだけ勝手に消費税を抜いて支払っても、それは単なる支払い不足です。

請求自体は間違っていないため、払っていないあなたが悪いだけになってしまいます。

トラブルになってしまう上、こちらに非があって不利です。

なので、まずはこういうワイルドな対処はやめましょう。

不利益を受けていない可能性もある

そもそもの話として、免税事業者に支払いをしても、不利益を受けていない可能性があります。

消費税の計算方法には、次の3つがあります。

このうち、あなたが「簡易課税」または「2割特例」で消費税の申告をしている場合、実は不利益はありません。

細かい話になるので詳細は書きませんが、こちらが「簡易課税」または「2割特例」であれば、インボイス登録していない事業者に対して支払いをしても、消費税の納税額が増えることはないのです。

したがって、あなたがまずやるべきことは、あなたの今年の計算方法が、

「一般課税」
「簡易課税」
「2割特例」

のどれなのかを確認することです。

なお、表に、売上規模を書いていますが、これはあくまで参考です。

この通りのことが多いですが、違うこともありますので注意してください。

ちなみに、ここでの売上規模は、正確には2年前の売上を指します。

今年の売上ではありません。

また、「簡易課税」については、あらかじめ税務署に所定の書類を提出しておかなければなりません。

売上規模が5,000万円未満であっても、書類を出していなければ「一般課税」となることもあります。

それから、「2割特例」は、インボイス制度導入による混乱を少なくするために、一時的につくられたもので、今後はなくなるものです。

その後は、「一般課税」と「簡易課税」のどちらかを選ぶことになっています。

…などと、消費税の制度が難しいばっかりに、分かりづらいところがあります。

税理士さんに確定申告をお願いしている場合は、直接確認した方が早いでしょう。

どのくらい不利益を受けるのか

消費税の計算方法を確認して、「簡易課税」「2割特例」であれば影響なしということで話は終わりです。

しかし「一般課税」であった場合は、免税事業者への支払いによって不利益が起きてしまいます。

「免税事業者が納税しない分、課税事業者であるあなたから税金を徴収します」ということで、税務署から上乗せする形で消費税の納税額が増えることになります。

この不利益を避けるには、値下げ交渉をする、インボイス登録している事業者に優先して依頼する、場合によってはインボイス登録を勧めるなどがあります。

しかしまずは、金額として、どのくらいのマイナスが出るのかを理解しておくといいでしょう。

案外、落ち着いて対処できます。

「なんで相手の消費税までこっちが払わなくちゃいけないんだ!」と感情的になっていたり、「なんか理不尽だなぁ」と納得できない気持ちがうずまいていたりする方でも、金額を知ると、「あ、なんだこんなもんかぁ」と冷静に考えられるようになります。

どのくらい負担が増えるかというのが、以下の表になります。

インボイス制度導入による混乱を少なくするため、段階的にちょっとずつ負担が増えるようになっています。

たとえば、外注先から、税抜き10万円の請求が来るとします。

消費税率10%として、消費税は1万円、税込み金額は11万円ですね。

その外注先がインボイスに登録しているか、していないかによって、あなたにどのくらい負担に違いが出てくるか。

2026年9月までであれば、2,000円の負担増です。

その後、2029年9月までなら、5,000円に増えます。

さらに、2029年10月以降は、消費税全額の、1万円になります。

インボイスに登録していない事業者に支払いをすると、消費税がこれだけ増えるということです。

どうでしょうか、1万円となるとさすがに気になるかもしれませんが、2,000円や5,000円であれば、まぁなんとか許せる範囲ではないかなぁという印象です。

もちろん、この負担が増える分だけ値下げしてくれよ、という交渉ができるのであればぜひやるべきでしょう。

消費税×●%

という負担割合だけでも覚えておくと、さっと話ができますので、頭に入れておくといいですね。

時期によってちょっとずつ変わってくるので要注意です。

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飯塚 千隼(いいつか ちはや)
飯塚 千隼(いいつか ちはや)
税理士
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