インボイス導入後の消費税はどうなった?納税は必要?計算方法は?
こんにちは、税理士の飯塚です。
今回は、インボイス制度導入後の消費税についてお話しします。
自分は、消費税を納めるのか納めないのか?
納めるならば、どのような計算をするのか?
インボイス制度の導入以来、制度が複雑になり、専門家でも間違いかねないような状況になってしまっています。
しかも、ネット上には、古い情報、新しい情報、そして正確ではない情報が混じっていて、いったいどれが正しいのか、判断がつきにくくもなっています。
ここでは、分かりにくくなった消費税の納税や計算方法について、できるだけスッキリと整理していきます。
混乱しがちなインボイス後の消費税あれこれ
たとえば、よく聞く疑問として、以下のようなものがあります。
疑問1 開業初年度と2年目は消費税は納めなくてよいのか?
インボイス制度の導入前は、たしかに、開業してから2年間は、ほぼ例外なく消費税を納めなくてもよい、とされていました。
しかし、いまは異なっています。
インボイス制度に登録している事業者は、1年目や2年目であっても、納税をしなくてはなりません。
ネットや書籍で古い情報を見てしまうと、誤解してしまうところですね。
疑問2 インボイス登録事業者は、必ず消費税を納めなくてはいけないのか?
インボイスに登録しても、特例で納税しなくてよいケースがあるのか?という疑問を持つ方もいらっしゃるようです。
しかし、こちらは必ず消費税を納めなくてはなりません。
疑問3 しばらくの間は、2割特例があるから、みんな税金が安く済む?
たしかに、インボイス制度導入の悪影響を緩和するため、経過措置が取られています。
そのなかで、いわゆる「2割特例」という、納税額や計算の負担が少なく済む方法があります。
しかしこれは、すべての事業者が使えるわけではなく、一部の小規模な事業者だけです。
インボイス後の納税と計算方法を決めるのは、この2つだけ!
さて、結局、自分は、消費税を納めなくてはいけないのか?
納めるのなら、どんな計算方法をするのか?
ますます混乱してしまいそうですが、実際はそこまでややこしくはありません。
こちらの2つで判定していきます。
①2年前の売上が1,000万円を超えているか?
②インボイス制度に登録しているか?
細かなレアケースを除くと、この2つで決まります。
表にすると、こんな感じです。
①2年前の売上が1,000万円を超えたか
まずは、2年前の売上が1,000万円を超えたかどうかです。
超えていれば、消費税の納税が必要になります。
これは、2年前の確定申告書や決算書を見れば、だいたい分かりますね。
よく勘違いしがちなのが、今年の売上が1,000万円だったら、今年納税が必要なんじゃないか?と思っていらっしゃる方がいます。
しかし、今年の売上ではなく、あくまで2年前の売上をもとに判断していきます。
したがって、今年すごく調子がよくて、売上が1,000万円を確実に超えるとしても、2年前が1,000万円以下だったら、もしかすると納税しなくてもよい、という可能性があります。
逆に、2年前に売上がどーんと上がって1,000万円を超えた場合は、今年の売上が少なくても、納税しなくてはいけません。
ちなみに、開業1年目と2年目は、2年前はまだ売上がゼロですので、2年前の売上は1,000万円を超えていない、ということになります。
②インボイス制度に登録しているか
つづいて、インボイス制度に登録しているかですが、これは難しくはないでしょう。
登録していれば、納税が必要になります。
もし①②とも当てはまらなければ、納税しなくてよい、ということになります。
消費税の計算方法について
では、納税は必要な方は、どのような計算方法をするのでしょうか。
まず、①2年前の売上が1,000万円を超えている場合は、原則課税か簡易課税という、2つの計算方法のどちらかです。
「簡易課税制度選択届出書」という書類を期限までに出していれば簡易課税ですが、そうでなければ原則課税になります。
一方、①2年前の売上が1,000万円を超えてはいないものの、②インボイス制度に登録している場合は、いわゆる「2割特例」という計算方法が使えます。
もちろん、原則課税や簡易課税といった計算方法も使えますが、多くの事業者さんで、2割特例のほうが納税額が安く済む上に、計算もかんたん、手続きもかんたんなため、2割特例を採用するケースがほとんどでしょう。
なお、この2割特例は、一時的な制度です。
2026年(令和8年)分の確定申告までは使えますが、その後は、原則課税か簡易課税のどちらかを選ぶことになります。